睡眠の質が人生を決める!脳機能・免疫・美しさを引き出す「眠りの科学」

私たちの身体と心にとって、睡眠が重要であることは誰しも疑う余地がありません。
しかし、睡眠不足は個人の健康にとどまらず、日本経済にも大きな影響を与えています。
日本睡眠学会の試算によると、睡眠不足による生産性の低下、欠勤、事故、医療費の増加などによる経済的損失は、なんと年間5兆円にも上るそうです。
本記事では、最新の知見を踏まえ、睡眠が「脳機能」「免疫と健康」「美容」「ダイエット」の4つの側面にもたらす驚くべき効果と、今日からできる実践アクションを詳しく解説します。
睡眠で脳機能アップ&デトックス(脳の働き)
起きていても仕事がはかどらない時は、思い切って眠る方が効率が良いかもしれません。
質の良い睡眠は、脳の活性化や機能維持に不可欠だからです。
睡眠が学習と記憶を助け、発想を豊かにする
睡眠中、脳は単に休んでいるわけではありません。
その日に起きたことや学んだ情報を整理し、既存の記憶と結びつけて「記憶の固定」を行っています。
十分な休息をとらないと、新しい物事を覚える「海馬」に悪影響を与え、記憶障害や意思決定能力の低下を招きます。また、睡眠は創造力の強力な増幅器でもあります。
ドイツのリューベック大学の研究では、しっかり睡眠をとったグループは、徹夜したグループに比べて難しい問題の正解率が約3倍も高いことが分かりました。
眠りについて最初の4時間の深い眠りの中で、創造性や問題解決能力が高まるとされています。
アルツハイマー病を遠ざける「脳の掃除」
起きている間に脳内にたまったダメージ物質や毒素を取り除く作業は、私たちが眠っている間に行われています。
この「脳の掃除」が不十分だと、アルツハイマー病やパーキンソン病のような疾患のリスクが高まる可能性があります。
詳細なメカニズムについては、
「アルツハイマー病を遠ざける「脳の掃除」とは? 睡眠との深い関係」の記事もあわせてご覧ください。
脳疲労と感情の回復メカニズム
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、それぞれが記憶の整理や感情の処理、脳疲労の回復に違った役割を果たしています。
「ノンレム睡眠とレム睡眠の違いとは? 記憶・感情・脳疲労回復のしくみをやさしく解説」でも解説している通り、質の高い睡眠サイクルを回すことが、日中の安定したパフォーマンスにつながります。
心身の健康と免疫力は睡眠から(健康・病気予防)
「眠らなくても死なない」と言われていた時代もありましたが、現在では睡眠不足があらゆる病気のリスクを高めることが分かっています。
睡眠不足が招くストレスの「負のループ」
睡眠がとれていない状態が続くと、ストレスホルモンが増加し、高血圧や不整脈を引き起こしやすくなります。
メンタル面でも、「ストレスに弱い理由は「睡眠不足」かも? 脳で起きている負のループと断ち切り方」で触れているように、脳の疲労がネガティブな感情を増幅させる悪循環に陥りやすくなります。
睡眠と免疫の深い関係:NK細胞とメラトニン
睡眠不足はがんの発生リスク(前立腺がんや乳がんなど)を高めるという報告があります。
これには「NK(ナチュラルキラー)細胞」と「メラトニン」が深く関わっています。
体内のウイルスやがん細胞を攻撃するNK細胞などの免疫機能は、副交感神経が優位になる睡眠中に活性化します。
「ウイルスもがん細胞も撃退!体の中の24時間パトロール隊「免疫」の凄い仕組み」や「睡眠はあなたを守る“最強の予防薬” ――風邪に負けない体をつくる眠りのヒント」でも解説している通り、質・量ともに十分な睡眠が最高の予防薬となります。
また、夜に暗い部屋でしっかり眠ることで、がん抑制効果があるメラトニンの分泌量が増加します(明るい部屋で眠ると分泌量が1/5に減少してしまいます)。
生活習慣病との切っても切れない関係
睡眠不足は糖尿病のリスクも上昇させます。
4時間睡眠が1週間続くだけで、血糖を下げるインスリンの働きが鈍ってしまうためです。
「糖尿病と睡眠の「切っても切れない」 深い関係~悪循環を断ち切るために~」で詳しく解説しているように、生活習慣病予防の第一歩は睡眠の見直しから始まります。
眠りは美しさと若さの秘訣(美容・アンチエイジング)
「夜更かしは美容の敵」は科学的にも事実です。
良質な睡眠によって分泌される「成長ホルモン」は、大人になっても強力なアンチエイジング効果を発揮します。
成長ホルモンでお肌と髪を修復
成長ホルモンは、紫外線やエアコンなどのストレスでダメージを受けたお肌や髪の毛を修復してくれます。
成長ホルモンは、寝入りばなの深い睡眠(ノンレム睡眠)の時に最も多く分泌されます。
睡眠後2時間後位が分泌のピークになるため、この寝始めの深い睡眠をいかに確保するかがアンチエイジングの鍵になります。
体温コントロールと副交感神経で質を高める
成長ホルモンの分泌を促すには、就寝に向けて体温をスムーズに下げる必要があります。
ゆっくりとお風呂に浸かって一度体温を上げ、その後熱が放出されて手足が温かくなり、体温が下がるタイミングで布団に入るのが理想的です。
就寝3時間前には食事を済ませて内臓を休ませ、アロマや音楽でリラックスして副交感神経を優位にしましょう。
しっかり眠って無理なくダイエット(食・ダイエット)
睡眠はダイエットにも直結しています。
アメリカのコロンビア大学の調査では、4時間以下しか眠らない人は、7~9時間眠る人に比べてなんと73%も肥満になりやすいという結果が出ました。
睡眠と食欲ホルモン(グレリン・レプチン)の関係
スタンフォード大学の実験によると、5時間睡眠の人は8時間睡眠の人に比べ、食欲を刺激するホルモン「グレリン」が14.9%多く、食欲を抑えるホルモン「レプチン」が15.5%少ないことが分かりました。
睡眠時間が短いほど、ホルモンバランスが崩れて太りやすくなってしまうのです。
睡眠不足だと「甘いもの」が欲しくなる理由
寝不足になると、お菓子や塩辛いもの、炭水化物が無性に欲しくなる傾向があります。
「「甘いものが止まらない」のは意志が弱いからじゃない! 脳とお腹の意外な関係」でも触れていますが、これはあなたの意志が弱いわけではなく、睡眠不足による脳とホルモンの誤作動が原因です。
ダイエットを成功させるには、まずはしっかり眠ることが先決です。
今日からできる!睡眠の質を高める実践アクション
現代のライフスタイルに合わせて睡眠の質を高める具体的なヒントをご紹介します。
朝の光と「時間栄養学」で体内時計をリセット
夜にしっかり眠るための準備は、朝起きた瞬間から始まっています。
「「朝がつらい」は気のせいじゃない! 50代女性の脳を整える「朝の光」のやさしい科学」にあるように、朝の光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜の睡眠ホルモン分泌のタイマーがセットされます。
また、「「朝は食べない派」のあなたへ。最強の目覚めをつくる「時間栄養学」のすすめ」で紹介している通り、朝食をとることで内臓の体内時計も整い、夜の良質な睡眠へと繋がります。
週末の寝不足解消法と、新しいリラックス習慣
平日の寝不足を休日の「寝だめ」で一気に解消しようとすると、かえって体内時計が狂ってしまいます。
「休み明けもスッキリ! 体内時計を狂わせずに「週末の寝不足」を解消する正しいヒント」を参考に、起床時間をずらしすぎない工夫をしてみてください。
また、就寝前のリラックス法として、「朝スッキリ起きられない50代へ。睡眠の質と脳の疲れを整える『抹茶』の新しい習慣」も、脳を落ち着かせる新しい選択肢としておすすめです。
心身の健康、美容、そして日々のパフォーマンスに欠かすことのできない睡眠ですが、日本人は世界的に見ても睡眠時間が非常に短いことがわかっています。
忙しい毎日の中で睡眠時間を削りがちですが、睡眠は浪費ではなく、未来の自分への「最強の自己投資」です。この記事をきっかけに、ご自身の睡眠習慣を一度見直してみてはいかがでしょうか。
参考文献・参考サイト
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『脳の取扱説明書』p71, p303, p306
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Thomas Andrillon & Sid Kouider, “Implicit memory for words heard during sleep.” Neuroscience of Consciousness, Volume 2016, Issue 1, 2016, niw014. https://doi.org/10.1093/nc/niw014
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Wagner U. et. al., “Sleep inspires insight.” Nature Jan 22; 427 (6972).
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“Importance of Sleep: Six reasons not to scrimp on sleep.” Harvard Women’s Health Watch; 13 (5), Jan. p1-3, 2006.
- http://www.1kampo.com/saihatsu-yobou/saihatsu_yobou_book4-10.html

