脳と筋肉の意外な関係~マイオカインについて~
木ノ本景子 2024年7月8日 限定記事
最近、認知症予防に効果があるのでは?と注目を浴びている「マイオカイン」という物質があります。
マイオカインという言葉を初めて聞くという方も多いのではないでしょうか?
この物質の存在が知られ、研究が進んできたのは、ここ20年くらいなのです。
では、マイオカインとは何なのでしょう。
マイオカインとは、骨格筋(筋肉)から分泌される生理活性物質(サイトカイン)の総称です。
「筋肉」は、身体の中で最も大きな臓器です。筋肉というとどうしても運動や身体を支える運動器官としてのイメージが強いと思いますが、いろいろな臓器に影響を与える物質(マイオカイン)を分泌しているのです。
マイオカインは筋肉から分泌された後、筋肉自体に作用するものもありますが、血流に乗って全身に運ばれ、さまざまな臓器に対して良い影響を与えるものも多くあることが分かっています。
マイオカインの中には、運動をすると分泌されるものもありますが、この物質の中に神経細胞の生存、神経回路の形成・発達など脳にとって重要な働きをする脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌を促進するものがあるのです。
つまり、運動をすること、筋肉量を維持することが脳にとって重要ということです。
マイオカインを増やし、BDNFを増やすという観点からすると強度が高い運動(インターバルトレーニング)が有効とされています。
いっぽう強制的でストレスのかかりやすい運動は、BDNFの発現を抑制するストレスホルモンを産生するため、低負荷の運動が良いという報告もあります。
結局は、運動は重要だけど、その人その人に合わせる必要があるということでしょうか?
これらのことから考えると
- 認知症予防のためにはサルコペニア(加齢や疾患により筋肉量が減少して、筋力の低下、身体機能の低下をきたすこと)の 予防が重要
- 楽しんでできる運動を選ぶ
- 無理をしすぎない
ということが重要なのではないかと思います。