認知症の方と旅行する時の3つの注意点と事前準備 

tら家族が認知症になったとしても、いっしょに旅行に行きたいと思ったり、

今までは先延ばしにしていたことでも、少しでも元気なうちに行っておきたいと思うところがあったり、家族の冠婚葬祭などで出かける必要があったりなど

少し遠出をすることがあるかもしれません。

そういう時に、気をつけたいポイントと事前準備についてお伝えしていきます。つといえるでしょう。

 

認知症の方と旅行する時の3つの注意点

疲れ対策をする

認知症の方は、脳が疲れやすい傾向があります。

特に旅行のように慣れない環境に行くと、その環境になじもうとして余計に疲れるといったことが起こってきます。

旅行に出かけてすぐのときは楽しんでいたとしても、

徐々に疲れがたまり、

  • 注意力が欠けて思わぬ危険を招く

例)ちょっとした段差でつまづいて転倒する、何かにぶつかる、迷子になる

  • 機嫌が悪くなる
  • 眠くなってしまう

ということが起きてきます。

疲れがひどくなるとせん妄を引き起こすことも。

では、疲れ対策としてどのようなことをすればよいのでしょうか

  • 充分に休息がとれるよう長い行程は避ける
  • あらかじめ休憩できそうな場所をチェックしておく
  • 時間にゆとりがある行程にする
  • 疲れがひどい場合、目的地や行程を変更できるような気持ちのゆとりを持つ

ご本人が予定を変更するに対して、「自分のせいだ」と責任を感じているようなら

同行している家族もゆっくりしたいからそちらの方が良いと思っていることや

変更した先も楽しそうだと他の家族もみんなで行ける旅行を楽しんでいることを伝えましょう。

 

記憶障害への対策をする

認知症の方は、疲れると特に

なぜ今ここにいるのか

どこに向かっているのか

わからなくなることがあります。

そうするとどうしても不安になったり、困惑したりしてしまいます。

そのため、こういった記憶障害へ配慮することが大切になってきます。

たとえば、どこに向かっているのかを何回もていねいに伝えたり、

目的地のパンフレットを見せたり、

簡単な行程表を作って、ご本人に見せ、今いる場所やこれからの予定を伝えたり

することで、ご本人が安心して過ごせるようになるかもしれません。

また、宿に泊まって目が覚めたとき、どうして自分がここにいるのか分からないということもありえます。

そうしたときのために、朝ご本人が心地よく過ごせるようご本人の好きなお菓子を準備しておくといったような工夫をしておくのもよいでしょう。

同行者もゆとりを持つ

認知症の方と旅行には、いろいろな配慮が必要です。

そのため、同行者も疲れがたまりがちです。

 

同行者自身も充分に休息がとれるよう、ゆとりを持った予定を組みましょう。

 

せっかく心を砕いて準備した旅行であっても

ご本人が思ったほど喜んでくれなかったり、

眠ってしまったり、ついさっきのできごとを忘れてしまったりと

ご家族の思い通りにはいかないことがあるかもしれません。

 

認知症の方が旅行へ行ったことを忘れてしまっていても

そのときの楽しんでいた感情の記憶は残っているかもしれません。

さらには、いっしょに経験したそういう大変なことも後々には、

ご家族自身のよい思い出になるでしょう。

 

事前準備

持病の悪化や体調不良に備える

認知症の方は、ご自身では体調の変化に気がつかないということはよくあります。

実際、具合が悪くて吐いたとしても、そのあとスッキリして症状がなければ、嘔吐したことすら忘れてし待っているということはよくある話です。

また、暑い日に寒いといって洋服を何枚も着込んで汗だくになっていたり、骨折して普通なら痛いはずなのに、歩いているということも珍しくありません。

 

その分、周りがご本人の体調について配慮してあげる必要があります。

はっきりとどこがつらいのか訴えることが難しい場合もありますので、

いつもと比べて何となく元気がないとか、食事が進まないといった些細な変化に気をつける必要があります。

 

事前の準備もご本人に任せるのではなく、いつも飲んでいる薬をちゃんと持ったのか、

時間にちゃんと薬を飲んだか、宿に置きわすれていないかなど周りの人が注意する必要があります。

かかりつけ医に事前にアドバイスをもらうというのもよいかもしれません。

 

旅先で具合が悪くなるかもしれないことを想定して、

持病の一覧を記入したメモやお薬手帳、健康保険証などを持っていくようにしましょう。

 

不安や混乱に備える

慣れない場所というのは、認知症の方にとって疲れやすくなるばかりではなく、

混乱や不安が生じやすい状況でもあります。

なので、旅行の行程は予定に休憩の時間も組み込んだゆとりのあるスケジュールにしましょう。

また最初に決めたスケジュールに固執するのではなく、

ご本人の様子に合わせ変更できるよう代替案を考えておくと同行者にも気持ちのゆとりが生まれるかもしれません。

ご本人が好きなお菓子や音楽などを事前に準備しておくことで、

ご本人が不安になった時などでも安心して過ごしていただけやすくなる可能性があります。

排泄に備える

ふだんは排泄に問題がない方でも

ふだんと違う環境のせいで尿意が感じにくくなったり、

無理をして尿意を我慢してしまったり、

トイレの場所がわからず混乱してしまったりすることがあります。

特に、今までご自身で問題なく排泄されていたかたであれば、

排泄を失敗することでプライドが傷ついたり、周りに迷惑をかけたことへの罪悪感などから落ち込んだりしてしまうかもしれません。

そのためにも、

  • トイレの場所を早めに確認する
  • 早めにトイレを促す声掛けをする
  • 替えの下着や衣服、パットなどの失禁対策をする

ことが重要です。

行方不明に備える

宿についたときや乗り物に乗ったときなど同行者の気が緩み、

目を離した結果、ご本人がいなくなる可能性があります。

また夜、同行者が眠ってしまった後、ご本人がどこかへ行ってしまうこともありえます。

 

そのため、ご本人に身元がわかるものを持っていてもらうようにしましょう。

出かけるときに必ず持っていくものがあれば、

それにGPS機能の付いたものやネームプレート(名前・連絡先を記載)などを入れて置くのもよいかもしれません。

ご本人が嫌がらなければ、洋服にネームプレートをつけるというのも一つの方法です。

宿泊先に事前に一声かけておくのもよいかもしれません。

また、万が一に備えて、当日来ていた服装を写真におさめておくことも大切です。

移動に備える

ふだん一人で杖を使って歩ける方でも、疲れてしまうと難しくなる場合があります。

楽しくていつもよりも歩いてしまって、疲れて動きが鈍くなることもあるかもしれません。

シルバアーカーや車いすなど、いつもの一つ上のサポート方法を準備しておくのもよいでしょう。

 

もともとシルバーカーや車いすを利用している方は、

事前にエレベーターがあるのか、スロープがあるのか、トイレの広さなど

行程中のバリアフリー対策について調べておく必要があります。

最後に

東北大学と旅行会社のクラブツーリズムによる共同研究では、「旅行に行くことが多い人ほど人生に対する失望感が低く、目的を持って旅行に出かける人ほど人生に対する満足感やポジティブな気持ちが強い」ことがわかっています。

認知症になってしまうと旅行に行ったこと自体は覚えていないかもしれません。

しかし、感情の記憶というのは保たれていることがあります。

イヤなことをされたときは何をされたか忘れても、その時の感情は覚えていて、同じような状況で落ち着かなくなるように、楽しい時間を過ごした記憶も忘れているようにみえても本人の中に残っているかもしれません。

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