脳を活性化させる7つの方法 

いくつになっても脳の状態を改善することは可能です。
いますぐ始められる脳を活性化する7つの方法を紹介します。

1.速歩きをする

普通に歩くよりも速歩きをしたほうが、脳の血流が増えることが分かっています。
というのも、速歩きのほうが周囲の人や物を避けるためにより注意を払う必要があります。
そのため、その分、脳を使うことになるため、脳はより多くの酸素や栄養が必要になり、脳へ酸素や栄養を運ぶ血流が増加するのです。

実際、週に3回・40分間の速歩きを1年間続けると、脳の海馬の体積が2%大きくなるという研究データもあります。
海馬というのは、新しく物事を覚えるために重要な場所です。

物忘れが問題になってくるアルツハイマー病では海馬が萎縮していることが知られています。

参考) Exercise training increases size of hippocampus and improves memory
https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.1015950108

東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長である青柳博士が群馬県の中之条町で行った研究(中之条研究)によると、1日当たりの平均歩数が8,000歩で、その中に速歩き(中強度の活動)を20分以上行っていると認知症になりにくかったそうです。
この場合の20分というのは、連続で行う必要はなく、1日の合計になります。

速歩きのポイントは
・顔は正面を向けて遠くを見る
・腕を前後に大きく振る
・背筋を伸ばして胸をはる
・膝をしっかり伸ばす
・大股で歩く
・踵から着地する
です。

2.姿勢を正す

実は、姿勢と集中力には密接な関係があります。

 

というのも、人間は、姿勢が悪いとそれだけ余分な筋力を使ってバランスを保とうとしてしまいます。
そのため、体の背骨や骨盤などのさまざまな部位への負担が増え、全身へのストレスが増加することになるのです。

それと同時に、さまざまな神経が圧迫され、脳への血流も減少し、働きが不活発になります。
その結果、集中力の低下だけでなく、目の疲れや肩こり、頭痛、腰痛をきたします。

また、姿勢が良いと胸が大きく開きやすくなり、その分、肺へ空気を取り込みやすくなります。
これにより、より深く呼吸をすることが可能になり、酸素が脳や体にいきわたりやすくなるのです。

その結果、脳は活性化し、また全身の血行も良くなることで体もシャキっとし、より集中しやすい体をつくることが可能になります。

そのせいか背筋を伸ばすと、脳が覚醒し、情報処理に必要な短期的な記憶力などが高まります。
実験では、背筋を伸ばすと短期的な記憶テスト、無作為の数字を覚えて逆からいう、ボタンを早く押すといった課題で成績が良くなったという報告があります。
これは、抗重力筋が働くことで、脳内でノルアドレナリンが分泌され、脳が覚醒するためといわれています。

 

では、良い姿勢を保つにはどういたらよいのでしょうか。

座っている時の姿勢のポイントは4つ。

  • イスに深く座る。
  • 背筋を伸ばして、耳の後ろの辺りと肩、腰の張っている部分が一直線になるようにする。
  • 膝は揃えて、お尻と背中の角度と膝の角度がおよそ90度になるようにする。
  • 首は垂直にし、少しあごを引く。

慣れるまでは少し辛く感じるかもしれませんが、それは姿勢が崩れている証拠。

少しずつ意識する時間を増やすようにしましょう。

 

3.指の運動をする、利き手と逆の手を使う

手指を使う運動によって脳の血流が増えることが分かっています。
上記、右の図は有名なペンフィールドのマップになります。
ピングが脳の運動野(体を動かすための指令を出す部位)とブルーが体性感覚野(体から触覚情報を受け取る部位)です。
「体を動かす」「触覚情報を受け取る」といっても、実は「脳のこの場所は親指」「こちらは足」というようにそれぞれ担当分野が決まっています。
見てもらうと分かるように口や指が運動野・体性感覚野に占める割合が大きくなっています。
左の図はホムンクルスで、「感覚機能」「運動機能」で脳が占める体積の割合で作った人体モデルです。
指や口が大きいため、ちょっと不格好に見えますね。
これは実際の私たちの身体の体積と私たちの脳がその部位を動かしたり、感覚を受け取ったりすることに使っている体積が比例しないことによって起きてきます。
これをみても指や口を使うと脳が活性化しやすくなるのがわかると思います。
特に簡単に身体を動かすような運動をすることが難しい高齢者にでも気軽に始めることができ、おススメです。
利き手と逆の手を使ったほうが前頭葉の血流が増えるという報告もあります。

4.よく噛んで食べる

噛む(咀嚼する)という動作はもっとも簡単にできる運動です。
この咀嚼するという行為によって、脳の血流が増え、脳の運動野や感覚野、前頭前野、 小脳などが活性化するということが分かっています。
これは脳のマイネルト基底核(神経細胞)が活性化することで起こってくるとされています。
そして、このマイネルト基底核ですが、認知機能と深いかかわりがあって、アルツハイマー病ではマイネルト神経細胞が変性していたり、数が減ったりすることが分かっています。
つまり、よく噛んで食べることで認知機能の維持や改善が期待できるというわけです。
これは、咀嚼するという動作の観点からみたものですが、食事を味わうということも脳にとってはプラスの働きをしています。
というのも、味わいながら食事を美味しく規則正しく摂ることによって脳の中のホルモン“オレキシン”を放出するオレキシン神経が活性化するということが分かっています。
オレキシンが活性化すると筋肉内で糖を利用しやすくなり、血糖上昇が抑えられ、摂取した栄養が脂肪細胞に過剰に蓄積することを防いでくれます。

 

5.音読をする

「1日10~15分の音読を行うと記憶力が20%アップする」
という報告があります。
音読を行うと、脳の神経細胞が一斉に活性化し、
脳の血流がどんどん高まって、大脳全体の70パーセント以上が活動しはじめる
ともいわれています。
実際、私たちが音読を行うときのプロセスを考えてみましょう。
文字を見たとき、脳の視覚野である「後頭葉」が働きます。
そして、目を動かす指令を出す「前頭眼野」が働 いて書いてある文字を追いかけます。
次に、その書いてある文字を理解しようと「ウェルニッケ野」が活性化します。
さらに、「脳全体の司令塔」である前頭前野が働き、読んだ文章を理解し、記憶し、思考するという活動が行われるのです。
 そして、声に出さずに文字を読んでいるときでさえ、
音を聞くときに働く聴覚野も活性化するのだそうです。
脳の神経細胞同士をつなぐ神経線維である「弓状束(きゅうじょうそく)」は、
言葉との関係が深いといわれていますが、読書習慣のある子どもは、その構造がよりよく発達していることがわかっています。
つまり、読書をすることが言語発達や脳の構造に影響を与えているのです。

 

6.ストレスを減らす

私たちが何か覚えるときに大切な働きをしているのが、
脳の「海馬」と呼ばれる部位です。

 

しかし、残念なことに「海馬」はストレスにすごく弱いのです。
ストレスホルモンであるコルチゾールに長期間さらされると、
海馬が萎縮してしまいます。

 

最近では、ストレスにさらされると海馬における神経細胞の生まれ変わり(神経新生)を阻害し、海馬の機能が変化して、記憶や学習能力、情動行動に影響を与えることが分かってきました。
(Chattarji, Sumantra et al. “Neighborhood matters: divergent patterns of stress-induced plasticity across the brain.” Nature neuroscience vol. 18,10 (2015): 1364-75. doi:10.1038/nn.4115)
つまり、物忘れを防ぐ(海馬の機能を維持する)には、ストレスケアは欠かせないということです。

 

他にも、慢性的なストレスによって前頭葉の機能の低下が起こるほか、血液脳関門の機能が低下することが分かっています。
ストレスによって前頭葉の中にある眼窩前頭皮質というところも萎縮するということが分かっています。
これは、東日本大震災の恐怖や記憶によって「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)のような症状になった人の脳を調べてわかったことです。
震災前に磁気共鳴画像(MRI)装置で脳の画像を撮影していた東北大学生42人について、震災から3-4カ月後にPTSD症状の診断と脳の再撮影を行いました。
42人のうち5人がPTSDの初期症状を示し、
脳内にあって恐怖記憶の消去に関係する「左眼窩(がんか)前頭皮質」の部位で脳体積の 現象を認めたそうです。
眼窩前頭皮質は、脳の前の前頭前野の下側部分に位置し、
視覚、味覚、嗅覚など全感覚情報が入力し、
攻撃性制御(攻撃の適切性の判断)、人格、道徳(モラル)、社会性、後悔、楽しみや喜び、他者の情動的なこころの理解、自分に関する記憶の想起、自律神経制御(心臓にも影響)などに関わる領域です。
更に詳しく見ると、眼窩前頭皮質の内側部は報酬など良いことの処理、
外側部は罰など悪いことの処理に関わると考えられています
(内側は楽しいことを思い出している時に活動が増加し、
外側は嫌なことを思い出す時に活動が増加します)。
震災のような大きなストレスは日常では経験することは少ないかもしれませんが、
ストレスホルモンが前頭前野の神経細胞に影響を与え、
前頭前野が萎縮するという報告もあります。
血液脳関門の機能低下は脳の炎症をもたらし、うつ状態を発症しやすくなるとされています。
ストレスは自分ではなかなか気づきにくいものです。
何となく調子が悪い、という人はストレスが溜まってきているのかもしれません。
がんばり過ぎず、肩の力を抜いて、意識的にリラックスする時間を作ってみてください。

7.空白の時間を持つ

私たちの脳には、空白の時間にだけ働く脳のデフォルトモードネットワークという機能があります。
こちらは、脳がお休みしている(ボーっとしている)ときにだけ働くという不思議な機能です。

 

たとえば、のんびりお風呂に入ったり、ボーっと散歩をしているときにふとアイデアが思い浮かぶという経験をしたことはないでしょうか?

 

これらは、デフォルトモードネットワークによるものといわれています。

 

デフォルトモードネットワークの働きは主に
1.危機への備え
2.情報の整理
だといわれています。

 

そして、情報が整理され、スッキリすることで新たなアイデアが浮かぶというわけです。

 

スティーブ・ジョブズが「Walking Meeting」を好んでいたというのは有名な話ですが、これはデフォルトモードネットワークの機能を上手に利用していたのでしょう。

 

息抜きにスマホを見るということをしていると
デフォルトモードネットワークの機能が弱まることが指摘されているので、気をつけてくださいね。

 

しかし、デフォルトモードネットワークが働くというのはよいことばかりではありません。
この機能が働きすぎると頭がぼんやりして注意力が散漫になってしまいます。
それに、余計なことを考えすぎて、不安にさいなまれることもあるそうです。

 

 

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