失禁
認知症が進行してくると失禁という症状が出てきます。
では、なぜそういった症状が出てくるのでしょうか?
原因
- 神経因性膀胱:膀胱のはたらきを調整する神経が障害をきたす
- 機能性尿失禁:尿意があり自力でトイレに行こうとしますが、間に合わず漏らしてしまう
- 器質的問題:前立腺肥大、前立腺がん、骨盤臓器脱(子宮脱など)、骨盤底筋群の筋力低下、膀胱周囲の神経機能低下(直腸癌・子宮癌術後)
- 薬の影響:利尿剤、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、三環系抗うつ薬、カルシウム拮抗薬
認知症になると起きやすい機能性尿失禁に焦点を当ててお伝えしていきます。
機能性尿失禁は、膀胱や尿道などに問題はなく、判断力や理解力、認知力に原因があります。
トイレに間に合わないだけでなく、排泄の意味が解らずトイレ以外の場所で排泄することもあります。
その主な要因は
・尿意を認識できない
・トイレの場所を忘れる
ことにあります。
- 尿意を認識できない
認知症の方は、膀胱が限界でも尿意を認識することができない場合があり、気づいたときには失禁してしまいます。
尿意がない限り、本人がトイレに行く必要性を感じないため、介護者も適切に対応することが難しくなります。
- トイレの場所を忘れる
認知症の方は、トイレの場所を忘れる場合があります。
その結果、トイレにたどり着くまでに失禁してしまいます。
場合によっては、判断力が低下し、前述したようにトイレ以外の場所で排泄することもあります。
尿意を認識できている場合は、介護者がトイレに誘導することで対処できます。
失禁に対する対処法
- トイレに行きたい合図を見逃さないようにする
そわそわしたり、表情が変わったり、急に静かになったり、物陰に隠れたりなど合図の出し方は人それぞれです。
よく観察して、ご本人のトイレに行きたい合図をみつけましょう。
- トイレに行きたい意思を伝えるように励ます
トイレに連れて行ってもらったり介助を受けたりすることに恥ずかしさを感じる場合があります。
そのため、トイレに行きたい意思を介護者に伝えられないこともあるでしょう。
トイレに行きたい意思を介護者に伝えやすくするために、「トイレに行きたいときは遠慮なく言ってほしい」と伝えるようにしましょう。
- トイレを簡単に見つけるようにする
一目見てトイレだとわかるように大きな文字や便器のイラストなどの張り紙をするなどトイレを見つけやすい工夫をしましょう。
- 脱着しやすい服装にする
運動機能や認知機能が低下しているためズボンを下すのにも時間がかかります。
すぐに脱げるようにウエスト部分がゴムのズボンにするとよいでしょう。
- トイレを安全に使えるようにする
認知機能の低下によってトイレを安全に使用することが難しい場合があります。
例えば、滑りやすいマットが敷かれていることを認識できずに歩き、滑って転倒することが考えられます。
そのほか、植木やゴミ箱などを便器と間違えて使用する場合もあります。
このようなトラブルや事故を防ぐために、便器と間違えやすい植木やゴミ箱のほか、滑りやすいマットは置かないことが大切です。
また、立ち上がりやすいように便座を高めにしたり、便座の両側に掴める棒を設置したりすることも有効でしょう。
- トイレに行くスケジュールを設定する
いつトイレに行っているのかをチェックすることで、適切なタイミングでトイレに行くように促すことが可能になります。
トイレに行くタイミングの少し前に声をかけることで、トイレに行き着くまでの間に失禁するのを防止できます。
また、起床の直後や2時間ごと、食後すぐ、就寝前など、定期的にトイレに行くように促すことも有効です。
- 便器の使い方を一緒に確認する
排泄の仕方や排泄後の処理など一緒に何度も確認しましょう。
- 就寝前の利尿作用のある水分摂取を控えるようにする
利尿作用があるカフェインが含まれたコーラやコーヒー、お茶などは眠る前にはなるべく控えるように促しましょう。