昼夜逆転
昼夜逆転はなぜ起こるのか
年齢とともに睡眠は変化します。
健康な高齢者の方でも睡眠が浅くなり、夜中に目が覚めたり(中途覚醒)、
朝早くから目が覚めたり(早朝覚醒)といったことが起こりやすくなります。
というのも、年とともに体内時計に変化が生じ、
睡眠だけでなく、血圧・体温・ホルモン分泌など睡眠を支える多くの生体機能リズムが前倒しになります。
そうなると朝早くに目が覚めるということが起きてきます。
また、年とともに睡眠の質も変わってきます。
睡眠脳波を調べてみると、深いノンレム睡眠が減って
浅いノンレム睡眠が増えるようになります。
そのため尿意やちょっとした物音などでも何度も目が覚めてしまうようになります。
認知症と睡眠障害
高齢者の中でも認知症の方の場合は、脳の機能が損なわれることに伴ってさらに睡眠が浅くなり、症状が進行すると1時間程度でも連続で眠れなくなってしまうといわれます。
具体的には不眠や過眠、睡眠時無呼吸症候群のほか、「概日(がいじつ)リズム睡眠障害」などさまざまな睡眠障害が見られます。
「概日リズム睡眠障害」では、体内時計と実際の時間とのずれを修正できないことによって入眠や覚醒の時刻が一般的な時刻とずれてしまい、昼寝が増えて夜に覚醒する昼夜逆転が起こります。
また、認知症になると日中の活動が少なくなる傾向があります。
そうすると、日中に日光を浴びる量が減ってしまい、
それが体内時計を狂わせる要因にもなったり、
日中の活動量が少ないことにより睡眠物質がたまりにくくなり、
夜間の不眠につながったりします。
また、飲んでいるお薬によっても睡眠障害をきたすことがあるので注意が必要です。
特に、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、
脳の睡眠と関連する部分が変性するため、睡眠障害が現れやすくなります。
アルツハイマー型の認知症は、食事をしたことを忘れるなどの記憶障害から始まりますが、
次第に今がいつか、自分がどこにいるかがわからなくなるなどの見当識障害が現れてきます。
そのため、さらに体内時計が乱れて、睡眠時間が少なくなる、浅い睡眠が多くなる、夜間に眠れなくなるなどの症状が出現し、昼夜逆転が起きやすいのです。
一方、レビー小体型認知症では、レム睡眠行動障害が多く見られます。
寝ている間に大声を出したり、手足をバタバタと動かしたりするほか、重症になると起き上がったりすることもあります。
声をかけたりすると比較的すぐに覚醒しますが、時にはせん妄との区別が必要な場合もあります。
また、レビー小体型認知症を発症する前に、その前触れとしてこのような睡眠障害が現れることもあります。
昼夜逆転の対処法
午前中に日光を浴びて体内時計を整える
昼夜逆転の対処法
認知症の中でもアルツハイマー病の方は、
体内時計が狂いやすいことが指摘されています。
参考)認知症における睡眠障害 臨床神経 2014;54:994-996
体内時計を整えるためには、午前中に日光を浴びることが効果的です。
できれば、午前中に散歩に行くなど、屋外での活動を取り入れるのが理想ですが、
難しい場合には、カーテンを開け、窓際で日光を浴びるようにしましょう。
日中の活動量を増やす
昼夜逆転の対処法
日中に起きていた時間が長いと自然と夜に眠くなります。
それは、日中活動しているときに脳の中で産生される睡眠物質(プロスタグランジンD2、アデノシンなど)がたまり、夜になると自然と眠くなるから言われています。
生活リズムを整える
昼夜逆転の対処法
起床時間や就寝時間だけでなく、食事をなるべく同じ時間にとるなど
生活のリズムを整えるようにしましょう。
そうすることで体内時計が整いやすくなります。
夜間帯は睡眠の妨げになる嗜好品は控える
昼夜逆転の対処法
夜間帯は覚醒作用のあるカフェインの入った飲み物を避けるようにしましょう。
また、アルコールは睡眠の質を落とし、日中の眠気につながります。
さらに、タバコは睡眠障害の原因になります。特にニコチンの量が多いと出やすいともいわれています。
不安や痛みを和らげる
昼夜逆転の対処法
年齢を重ねると体のあちこちに痛みを感じるという人が増えてきます。
認知症の人の中には、そういった体の不調を訴えることができない人もいます。
特に夜間の静かな時には痛みが感じやすくなるという人も少なくありません。
また、認知症になると不安になりやすいともいわれています。
本人の話をよく聞いてあげるようにしましょう。
眠る環境を整える
昼夜逆転の対処法
寝室の気温や湿度、眠るときの照明など寝室の環境を整えたり、
自分に合った寝具を選ぶことは、案外重要です。
質の良い睡眠をとることで、日中の眠気を防ぐことができます。