「昔は大丈夫だったのに…」熱中症が急増している3つの理由と、2026年の正しい防衛策

「昔はこんなに暑くなかったし、熱中症なんて言葉も聞かなかったのに……」
そんな風に感じたことはありませんか?
実はその感覚、データで見ても100%正しいのです。
近年、毎年のように「過去最高の暑さ」がニュースになり、
熱中症で救急搬送される方や、命を落とされる方の数が深刻な問題になっています。
まずは、私たちの周りでいま何が起きているのか、実際のデータを見てみましょう。
Contents
そもそも「熱中症」ってどんな病気?
一言でいうと、熱中症とは
「暑さのせいで、体のコントロールが利かなくなってしまった状態」の総称です。
私たちの体は、暑い時には
汗をかいたり、皮膚の血管を広げたりして、
体温を一定に保つ素晴らしい仕組みを持っています。
しかし、高温多湿な環境に長くいると、
この仕組みが以下のようにドミノ倒しのように崩れてしまいます。
- 水分と塩分のバランスが崩れる
(大量の汗をかくことで、体の中の水分だけでなくナトリウムなどの塩分が足りなくなる)
- 体温調節の機能がパンクする
(脳の体温コントロール機能が正常に働かなくなる)
- 体の中に熱がこもる
(熱を外に逃がせなくなり、体温が危険なレベルまで上昇する)
その結果、めまい、立ちくらみ、頭痛、筋肉のけいれん、さらには意識を失うといった様々な障害が引き起こされるのです。
「自分は体力が大丈だから」と思っていても、
体の中のバランスが崩れれば誰にでも起こり得る、とても身近なリスクです。
では、実際にいま、私たちの周りでどれくらい熱中症が増えているのか、リアルな現状をデータで見てみましょう。
データで見る、熱中症のリアルな現状
以下は、熱中症による死亡者数と救急搬送者数の推移を表したグラフです。

グラフを見ると一目瞭然ですが、
1990年代半ばから死亡者数がグッと増え始め、
今や毎年1,000人を超える方が熱中症で亡くなる時代になってしまいました。

また、月別のデータを見ると
ピークは7月・8月ですが、実は5月や6月の早い段階から救急搬送される方がたくさんいることが分かります。
これは「まだ本格的な夏じゃないから大丈夫」という油断や、
体が暑さに慣れていない(暑熱順化ができていない)ことが原因です。
国もこの状況を重く受け止め、
以前から運用している「熱中症警戒アラート」に加え、
近年の命に関わる猛暑を受けて、一段上の深刻な危険を知らせる「熱中症特別警戒アラート」を新設するなど、社会全体での防衛が叫ばれています。
では、なぜ昔に比べてここまで熱中症が増えてしまったのでしょうか?
理由は大きく3つの変化(環境・身体・生活)にあります。
なぜ昔に比べて急増?考えられる3つの理由
理由①:「猛暑日」の激増(環境の変化)
熱中症が増えた最大の原因として、
まず頭に浮かぶのが「気温の上昇」ですよね。
気象庁のデータを見てみましょう。

確かに、日本の夏の平均気温は130年間で約1.3度上がっています。
ただ、「130年でたったの1.3度? 熱中症が急増した1990年代から見たら0.3度くらいしか上がっていないじゃないか」
と思われるかもしれません。
実は、本当に怖いのは平均気温ではなく、35度を超える「猛暑日」の数なのです。

こちらのグラフ(東京の事例)を見ると、
1970年代や80年代に比べて、
2010年代以降は猛暑日の数が明らかに跳ね上がっているのが分かります。
平均気温のわずかな上昇の裏で、
「日中に屋外にいることが危険なレベルの酷暑」が日常化してしまっていること。
これが、昔と今の決定的な違いです。
データはこちらを参考にしてます。
https://www.teguchi.info/weather/summer/extremely-hot-day/
大阪、名古屋、広島、福岡のデータも載っているので、
気になる人はチェックしてみて。
用語の確認
夏日:最高気温25度以上の日
(夏の季節の訪れや夏の暑さを感じさえる日)
真夏日:最高気温30度以上の日
(真夏のような暑さを感じさせる日、具体的な暑さ対策が必要になってくる日)
猛暑日:最高気温35度以上の日
(真夏の耐え難い暑さ、日中長時間屋外にいることが危険な暑さ、エアコンなしの室内での熱中症のリスクが高い暑さ)
理由②:高齢化と「体のセンサー」の鈍化(身体の変化)
2つ目の理由は、
私たちの「体」側の変化、つまり社会の高齢化です。
熱中症による死亡者の内訳を見ると、
実は全体の8割以上を65歳以上の高齢者が占めています。
人間は年齢を重ねると、体に以下のような変化が起こります。
- 暑さを感じる「センサー」が鈍くなる
(室内が暑くても、本人は『暑くない』と感じてしまう)
- 喉の渇きを感じにくくなる
(脱水症状に気づけない)
- 体内の水分量が減る
(もともと貯蓄できる水分が少ないため、乾きやすい)
ご家族が「エアコンをつけて!」と頼んでも、
本人が「冷えるからいらない、暑くない」と断ってしまい、室内で熱中症が進行してしまう……
というのは、現代の医療現場や介護の現場で非常によくあるケースです。
理由③:現代特有のライフスタイル(生活の変化)
最後の理由は、現代人の生活習慣や体調管理の難しさです。
昔に比べて街の都市化(ヒートアイランド現象)が進んだ現代では、エアコンなしで夏を乗り切ることは不可能です。
しかし、このエアコンが原因で「クーラー病(冷房病)」になり、
自律神経が乱れて体温調節機能が低下してしまう人が増えています。
「冷え切った室内」と「うだるような屋外」を一日に何度も行き来することで、体温をコントロールする脳の命令がパニックを起こしてしまうのです。
さらに、現代社会特有のストレス、睡眠不足、食生活の乱れなども、
暑さに負けない強い体を作る邪魔をしています。
💡 ここまでのまとめ
熱中症が増えているのは、単に「昔に比べて体力が落ちたから」「我慢が足りないから」ではありません。
「昔とは比べものにならない過酷な環境」 に、「高齢化による身体の変化」 や「自律神経の乱れ」 が重なった結果、誰でも簡単にかかってしまう「現代病」になったのです。
気温だけじゃない!熱中症リスクを決める「暑さ指数(WBGT)」とは?
熱中症の危険度を測る時、
私たちはどうしても「今日の気温は何時かな?」
と最高気温ばかりを気にしがちです。
しかし、実は「気温が高くなくても、
熱中症は多発する」という事実をご存知でしょうか。
例えば、同じ気温30度の日でも、
「カラッと晴れた日」と「ジメジメと蒸し暑い日」では、
後者の方が圧倒的に熱中症になりやすいのです。
というのも、湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体の中に熱がこもってしまうのです。
そこで、気温だけでなく【湿度】や【輻射熱(ふくしゃねつ=地面からの照り返し)】をすべて計算に入れた、本当に信頼できる熱中症の指標が「暑さ指数(WBGT)」です。
つまり、
気温が同じ場合、湿度が高いほうが熱中症発症リスクが高いということです。

上のグラフが示すように、
熱中症の発症頻度は、暑さ指数が「25℃」を超えたあたりからじわじわと増え始め、「28℃」を超えると急激に跳ね上がります(特に高齢者の方で顕著です)。
普段から天気予報などで「暑さ指数」をチェックする際は、
日本生気象学会の指針に基づく以下の4つのステージを意識してみてください。

- 25℃未満(注意):
適切な水分補給を心がける
- 25℃〜28℃(警戒):
運動や激しい作業の際は、定期的に十分な休息をとる
- 28℃〜31℃(厳重警戒):
外出時は炎天下を避け、室内ではエアコンを適切に使用する
- 31℃以上(危険):
高齢者の方は外出をできるだけ中止し、室内のエアコンをためらわずに使用する
【2026年最新】知っておくべき2つのアラート
この暑さ指数(WBGT)をベースに、
環境省と気象庁が発表しているのが「アラート」です。
2026年現在、私たちは2種類のアラートを正しく理解しておく必要があります。
1. 熱中症警戒アラート(暑さ指数33以上と予測される場合)
「明日は極めて危険な暑さになります。
熱中症にいつも以上の気づきを持って、しっかり予防行動をとってください」という呼びかけです。
このアラートが出た日は、エアコンの効いた室内で過ごすのが基本となります。
2. 熱中症特別警戒アラート(暑さ指数35以上と予測される場合)
命に関わる「過去に例のないような広域的な危険な暑さ」が予測される際、新設された最高レベルのアラートです。
自分自身の対策はもちろん、周囲の高齢者や子どもへの声かけを徹底し、不要不急の外出は絶対に避けてください。
2026年の正しい防衛策
ここまでの内容を踏まえて、
過酷な夏を健康に乗り切るための3つの具体的な防衛策をお伝えします。
① 暑さを避ける工夫(エアコンは必須)
「昔はエアコンがなくても平気だったから」
という考えは、ここまで見てきたデータの通り、今の環境には通用しません。
室内での熱中症死亡例の多くは、エアコンをつけていなかったケースです。
- 設定温度は「室温28度以下」を目安に
エアコンのリモコンの設定ではなく、
実際の部屋の温度計が28度以下になるようにします。
- 遮光カーテンやサンシェードの活用
窓から入る直射日光や地面からの輻射熱を遮るだけで、室温の上昇をかなり抑えられます。
② 正しい水分・塩分補給
「喉が渇いた」と感じた時点で、すでに体は軽い脱水状態に陥っています。
- 喉が渇く前に、時間を決めて飲む
コップ1杯の水分を、1〜2時間おきにこまめに補給するのが理想です。
- 大量に汗をかいた時は「塩分」も一緒に
前半でお伝えした通り、汗をかくと水分だけでなく塩分(ナトリウムなど)も失われます。
水だけを飲むと体内の塩分濃度が薄まり、かえって体調を崩す原因になるため、スポーツドリンクや経口補給水、塩飴などを賢く取り入れましょう。
③ 日常における行動指針(暑さ指数をチェックする癖を)
- 朝起きたら、今日の「最高気温」だけでなく、環境省の熱中症予防情報サイトなどで「今日の暑さ指数(WBGT)」や「アラートの有無」を確認する習慣をつけましょう。
- 5月や6月の梅雨の合間の晴れ間など、「急に暑くなる日」は特に熱中症が多発します。スケジュールを無理に詰め込まず、体を少しずつ暑さに慣らしていく意識を持ってください。
まとめ:熱中症は「正しい知識」で防げる病気です
熱中症は、ひとたび重症化すると命に関わる恐ろしい障害です。
しかし同時に、正しい知識を持ってあらかじめ準備しておけば、かなりの確率で防ぐことができる病気でもあります。
「私は若いから大丈夫」
「エアコンは体に悪いから」
といった過去の常識は一度脇に置いて、
最新のデータに基づいた防衛策を今日から実践していきましょう。
もし、ご自身やご家族に
「めまいがする」
「頭がぼーっとする」
「足がつる」
といった初期症状が見られたら、
決して無理をせず、涼しい場所に移動して水分・塩分を補給してください。
それでも症状が改善しない場合や、
自力で水分が摂れない場合は、
我慢せずにすぐ当院や医療機関へご相談くださいね。


