認知症の定義、原因など

認知症とは

認知症とは、

さまざまな原因で脳の神経細胞が減って、日常生活に支障をきたす状態のことです。

認知症というと病名のように思うかもしれませんが、腰痛や頭痛というのと同じように、状態を表す言葉です。

つまり、アルツハイマー病や脳梗塞といった病気になった結果、脳の神経細胞が減って認知症という状態になるのです。

そのため、認知症と一概にいっても、その原因にはいろいろあります。

 

認知症の原因

こちら、平成25年とかなり前のものになりますが、

厚生労働省「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能への障害への対応」からの出店になります。

認知症をきたす疾患の割合に関しては、出典もとによっていろいろさはありますが、

原因となる疾患に関しては同じような感じかと思います。

一番有名なものは、アルツハイマー病ですが、

それ以外にもいろいろな疾患が原因で認知症になるということが分かるかと思います。

それぞれの疾患については、また後日、お伝えしますが、

一番お伝えしたいことは、

「認知症の中には治療可能な認知症がある」

ということです。

認知症というと治らないイメージが強いかと思います。

そのためか早期の段階で病院を受診される方は意外と少ないのです。

自分が、家族が認知症だということを認めたくない

という気持ちも早期の受診につながらない大きな要因かと思いますが。。。

 

神経細胞が減って認知症という症状をきたすということをお伝えしましたが、

神経細胞自体もいきなり死滅するわけではなく、

神経細胞の機能が落ちていて、その段階で適切に治療すれば回復する病気というものも中には存在します。

たとえば、正常圧水頭症やビタミンB1欠乏症、甲状腺機能低下症などがそれにあたります。

ただし、いくら原因が治療可能な認知症だったとしても

脳の神経細胞の数が減り、脳の萎縮が進行してからでは治療効果は望めません。

これが、早期の段階で病院を受診し、適切な診断を受けてほしい理由の一つです。

 

とはいえ、どこにいけばいいの?

と迷われる方も多いかと思います。

神奈川県では、県のホームページに認知症の診療を行う医療機関名簿というものを載せています。

https://www.pref.kanagawa.jp/docs/u6s/cnt/f6401/p454893.html

認知症の原因疾患の診断がついていない場合は、

この中で、鑑別診断を行っている医療機関への受診をお勧めします。

最低でも画像診断が行えるところがよいかと思います。

 

薬剤誘発性認知症

1995年と昔の報告にはなりますが、Weytinghらによると回復可能な認知症の原因を調べたところ

最も頻度が高かったのが うつ病で23.8%

薬剤は、うつ病に次いで第2位で18.5%でした。

(Reversible dementia: more than 10% or less than 1%? A quantitative review. J Neurol. 242: 466-471, 1995)

 

ここで短絡的に、「薬は体に悪い」といって飲んでいる薬をやめてはいけません。

主治医の先生に処方された薬というのは、必要があって出されたものです。

たまに、自分が何のお薬を飲んでいるのかわからないという人をみかけますが、

今、自分がどのような薬を飲んでいるのかを把握しておくことは非常に重要です。

その上で、ずっと同じ薬を飲んでいるのであれば、

その薬が今の自分の状態にあっているのかを検討していく必要があります。

 

年齢を重ねるにつれて、昔とは食事の好みが変わっていったり、

お薬を体の外に出す力が弱まったり、病気のせいでお薬の効き方が変わったりする場合があります。

それだけでなく、以前に出された痛み止めなどを痛みがなくなってからもずっと飲んでいるという人を見かけることがあります。

 

特に、お薬の量が多い方は見直しが必要かもしれません。

 

また、新しくお薬を始める方は、お薬を飲みだした後の体調に注意しましょう。

頻度が少ない副作用であっても、たまたまご自身にその副作用が出る場合があります。

 

認知機能低下をきたすお薬として、抗コリン薬が有名です。

 

【抗コリン作用のある薬一覧】

日本老年薬学会より日本版抗コリン薬リスクスケールも出ています。

こちらを参考に https://www.jsgp.or.jp/news/20240517-1/

 

認知症の診断基準

ICD-10による認知症の診断基準要約(1993年)

以下の各項目を示す証拠が存在する

G1(1)記憶力の低下
新しい事象に関する著しい記憶力の減退.重症の例
では過去に学習した情報の想起も障害され,記憶力
の低下は客観的に確認されるべきである.

(2)認知能力の低下
判断と思考に関する低下や情報処理全般の悪化であ
り,従来の遂行能力水準からの低下を確認する.

(1)(2)により,日常生活活動や遂行能力に支障をきたす.

G2. 周囲に対する認識(すなわち,意識混濁がないこと)が,
基準 G1 の症状をはっきりと証明するのに十分な期間,保たれていること.
せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留.

G3.次の 1 項目以上を認める.
(1)情緒易変性
(2)易刺激性,
(3)無感情
(4)社会的行動の粗雑化

G4. 基準 G1 の症状が明らかに 6 か月以上存在していて確定診断される


NIA-AA AD 診断ガイドライン作成ワークグループから推奨された認知症の診断基準(2011年)

1.仕事や日常活動に支障
2.以前の水準に比べ遂行機能が低下
3.せん妄や精神疾患によらない.
4.認知機能障害は次の組み合わせによって検出・診断される
(1)患者あるいは情報提供者からの病歴
(2) 「ベッドサイド」精神機能評価あるいは神経心理検査
5. 認知機能あるいは行動異常は次の項目のうち少なくとも 2
領域を含む
(1)新しい情報を獲得し,記憶にとどめておく能力の障害
(2)推論,複雑な仕事の取扱いの障害や乏しい判断力
(3)視空間認知障害
(4)言語障害
(5)人格,行動あるいは振る舞いの変化

※NIA-AA:National Institute on Aging-Alzheimerʼs Association


DSM-5による認知症の診断基準(2013年)

A. 1つ以上の認知領域(複雑性注意、認知機能、学習および記憶、言語、知覚-運動、社会的認知)において,以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下に基づいている:
(1) 本人,本人をよく知る情報提供者,または臨床家による,有意な認知機能の低下があったという概念
および
(2) 可能であれば標準化された神経心理学的検査に記録された,それがなければ他の定量化された臨床的評価によって実証された認知行為の障害
B . 毎日の活動において,認知欠損が自立を阻害する(すなわち,最低限,請求書を支払う,内服薬を管理するなどの,複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とする)
C .その認知欠損は,せん妄の状況でのみ起こるものではない
D .その認知欠損は,他の精神疾患によってうまく説明されない(例: うつ病,統合失調症)

(American Psychiatric Association. Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fifth Edition. DSM-5. Arlington, VA. American Psychiatric Association, 2013)

 


HDS-Rを有効に活用するために

記憶(HDS-Rの3単語直後再生と遅延再生)

エピソード記憶の近時記憶を検査する方法
これらの課題は、記銘に関わる注意、発動性、意欲などの前頭葉機能、
記憶把持、記憶再生などのさまざまな因子の影響を受けることを
念頭に置いておくことが重要

・記銘(記憶形成)障害⇒前向性健忘 (anterograde amnesia)
・記憶の取り出し障害⇒逆行性健忘 (retrograde amnesia)

・アルツハイマー病:記銘―記憶保持の障害
・皮質下性認知症:注意障害による記銘障害、
思考緩慢による記憶の取り出し障害(記憶の利用障害)

3単語再生に対するヒントの有用性も記憶システムのどこに障害があるのかを考察する際に重要である。
・記銘―記憶保持系に障害:ヒントは有効ではない
・記憶の取り出し過程に障害:ヒントは有効

ヒントが無効である場合には、再認検査を追加する
再認:選択肢を与えて、その中から選ばせる
例)「私の言った木の名前は、サクラ―モモ―ウメのどれでしょう?」
再認課題にも失敗した場合:記銘―記憶保持系の障害は高度
ヒントは無効、再認課題可能:記憶保持はある程度保たれている

・アルツハイマー病:直後再生は比較的保たれている(=作業記憶は保たれている)
遅延再生が高度に障害され、ヒントの効果は低く、再認課題も障害される
・皮質下性認知症:注意障害のため3単語直後再生がなかなか成功しない
(思考緩慢や注意障害による記銘障害)。
思考緩慢のために遅延再生が障害されている場合が多いが、
ヒントは有効であり、再認がかなり保たれている

*遅延再生課題の時に、その直前の課題である数逆唱または計算課題を指して、
「数字のことですか」と聞き直すことがあるが、それはアルツハイマー病の場合に多い

語想起

前頭葉機能を反映するが、当然言語機能にも依存した検査である。
想起のスピード、野菜の種類のサブカテゴリーが保たれているか、最後に総想起数に注目する。

・アルツハイマー病:4~5個の野菜名を脈絡もなく列挙した後に、
答えに窮してしまうことが多い
・皮質下性認知症:思考緩慢のため返答がとつとつとしており、
考えている間に制限時間が経ってしまう
・前頭側頭型認知症:数個を早口で挙げた後、
「もうない、おしまい」と勝手に止めてしまう場合がある

野菜の種類のサブカテゴリーとは、
野菜の種類別カテゴリー(葉菜類、根菜類、果菜類など)、
用途別カテゴリー(サラダ用、漬物用、鍋用)、
季節別カテゴリーを意味する
これらのサブカテゴリーに準じた答えになっているかを観察する

・アルツハイマー病:潜在的な意味記憶障害を反映して、
カテゴリーに統一性がない場合、上位カテゴリー(いも、葉っぱ、まめなど)
で答える場合が多い。

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