1分間で動物の名前、いくつ言える?「アニマルネーミングテスト」で分かる脳と体の健康状態

「動物の名前を思いつく限り挙げてください」と言われて、あなたはどれくらい思いつきますか?
1分間に動物の名前をいくつ挙げられるのかを数えるのが「アニマルネーミングテスト(ANT:Animal Naming Test)」です。
動物の名前を思いつくまま挙げていくだけという、
誰にでも簡単にできるテストですが、
実は今、医療の現場で「患者さんの見えないリスク」を知るための重要なツールとして注目を浴びています。
肝硬変の方の「転倒・骨折リスク」が分かる?
岐阜大学病院に入院した肝硬変患者94名を対象に行った研究があります。
それによると、「1分間で答えられる動物の名前が11個以下だと、転倒や骨折のリスクが高くなる」ということが分かっています。
- 12個以上言えた人: 転倒した割合 11%、骨折した割合 0%
- 11個以下だった人: 転倒した割合 56%、骨折した割合 28%
結果には明らかな違いがあります。
でも、なぜ「肝臓」の病気で、「動物の名前」と「転倒」が結びつくのでしょうか?
実は肝硬変になると、
肝臓で解毒しきれなかったアンモニアなどの毒素が脳に回り、
気づかないレベルの軽い意識・認知障害(潜在性肝性脳症)を引き起こすことがあります。
これが注意力や空間を把握する能力を低下させ、転倒や骨折につながるのです。
アニマルネーミングテストは、
この「目に見えない脳への影響」をいち早くキャッチするのに役立っています。
参考:岐阜大学 肝硬変患者の転倒予測に関する研究
糖尿病の「インスリン注射の習得」も予測できる
アニマルネーミングテストは、
糖尿病の患者さんがインスリン注射の手技をどれくらいで習得できるかの予測にも使われています。
データによると、「1分間に11個以上の動物が思い出せると、
1週間以内にインスリンの手技獲得ができる」とされています。
近年、高齢の糖尿病患者さんにおいて、
認知機能が低下する「認知フレイル」が課題となっています。
認知機能が落ちると、
複雑な注射の手順を覚えられなかったり、
低血糖への対処が遅れたりする危険があります。
このテストは、患者さんが安全に自己注射を管理できる力があるかを測るバロメーターになっているのです。
参考:高齢の糖尿病患者が想起される動物の名前の数に基づいてインスリン自己注入技術を獲得する能力を予測する
今日の豆知識:言語流暢性課題とは?
アニマルネーミングテストは、
専門用語で「言語流暢性課題 (Word Fluency Test: WFT)」の1つに分類されます。
もう少し厳密にいうと、言語流暢性課題には以下の2種類があります。
- 意味流暢性課題(Category Fluency Test:CFT)
一定の時間内に「特定のカテゴリー(意味)」から言葉を思い出すテスト。
アニマルネーミングテストはこれに該当します。 - 文字流暢性課題(Letter Fluency Test:LFT)
「あ」から始まる言葉など、「頭文字」から言葉を思い出すテスト。
「あ」から始まる言葉を探す(文字流暢性)ときは、
脳の司令塔である前頭葉(実行機能・戦略的探索)をフル回転させます。
一方、動物の名前を挙げる(意味流暢性)ときは、
前頭葉に加えて、知識の貯蔵庫である側頭葉(意味記憶)の機能も強く使われます。
言葉がスッと出てこない時は、
もしかすると脳のワーキングメモリなど、前頭葉の機能が少し疲れていたり、
低下したりしているサインかもしれません。

前頭葉背外側機能をチェックしよう
「最近、言葉が出にくくなったかも…」と感じた方は、
日常の中で脳の司令塔である前頭葉に負担がかかっていないか、以下の項目をチェックしてみましょう。
注意力と集中力
- 話をしているときや仕事をしているときに、途中で気が散ってしまうことがある
- 同時に複数のことをしようとすると混乱したり、うまく進められないと感じる
- 大事なことや細かい内容をうっかり忘れてしまうことがよくある
計画性と目標達成
- タスクの優先順位を立てるのが難しい
- 長期的な目標を立て、それに向かって行動するのが苦手
- 計画を実行する際、途中で何をすべきかわからなくなることがある
問題解決能力
- 複雑な問題に直面したとき、解決策を考えるのが苦手
- 新しい方法やアプローチを考えるのが難しい
- 予期しない変更に柔軟に対応するのが難しい
作業記憶(ワーキングメモリー)
- 会話中に言われたことをすぐ忘れてしまうことがある
- 一度に複数の指示を受けると混乱する
- 最近、記憶力が落ちてきた気がする
行動の抑制
- あまり考えずに行動してしまうことが増えてきた
- 言ってはいけないことをうっかり口にしてしまうことがある
- 誘惑を抑えるのが難しいと感じることがある
感情のコントロール
- 怒りやイライラをコントロールするのが難しい
- ストレスの多い状況で冷静さを保つのが苦手
- 感情的な反応が以前よりも強くなっている
社会的認知
- 他人の表情や感情を読み取るのが難しくなってきた
- 相手の気持ちや意図を考慮せずに発言することがある
- 会話の流れに乗るのが難しいと感じることがある
たかが「動物の名前を挙げるだけ」のテストですが、
私たちの脳と体の状態を教えてくれる大切なサインが隠されています。
ご家族やご友人と一緒に、ゲーム感覚でぜひ一度試してみてくださいね。

